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火垂るの墓

 野坂昭如さんが亡くなった。

 直木賞受賞作「火垂るの墓」を読んだのは文庫本であったから、受賞からしばらく経った1970年代の初めであったろう。

 野垂れ死にした少年。持っていたキャンディーの空き缶からこぼれ出る妹の遺骨。40年以上経っても忘れることのない最終章だ。

 アニメ映画にもなり、夏には毎年のようにテレビで放映されているが、痛ましくて見ていられない。

 多才で、奇矯な振る舞いも目立つ人であったが、反戦、反権力の立場は一貫して変わることはなかった。

 幼い妹を助け得なかった痛恨の思いが作品を生んだのであろう。罪悪感に苛まれた人生だったかもしれない。

 戦中を知る人がますます少なくなっていく。合掌。

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