扶養家族
今年も裏の林のクマノミズキが花を付けた。華やかとはいえないが、この時期の山野ではよく目立つ。
ミズキに似るが花期がやや遅く、里山に多い。
この樹の葉を毛虫の時に食べる蛾が2種類、この6月に姿を現した。
一つはキアシドクガ、名前は恐ろしいが毒はない。
前脚が黄色でキアシ、ドクガ科に属するのでキアシドクガとされた。
日中はいつも飛び交っており留まることがない。
花がまだつぼみの頃、数十匹が樹の回りをチラチラと飛び交った。白い蝶と思えば優雅なものであった。
ちなみにフランスでは、蝶と蛾に区別はなく両方とも「パピヨン」と称するらしい。
それからしばらくしてもう1種、アゲハモドキが現れた。
他のものに似せることを「擬態」という
蝶の1種、ジャコウアゲハにそっくりで、数年前、はじめて見た時にはすっかり騙された。体内に毒を持つとされるジャコウアゲハに似せることで、鳥などの捕食から免れているらしい。
この樹には多くのツルが絡みついている。あまりにうっとおしいので適当に剪定しているがあっという間に元通りになる。種類はキヅタ、ツタ、イワガラミ、テイカカヅラ、アオツヅラフジ、ビナンカヅラ、ナワシログミと多彩で、これらも季節ごとに花や実を付け、年中見飽きることがない。
大木は一家の主、それに頼る多くの動植物は扶養家族のようなものか。「生物多様性」を一本の樹に見た思いがした。