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あだ花、あだ枕

 玄関先のモチツツジが氷雨に濡れている。

 実の成らないあだ花であるが、返り咲きと呼べば響きもいい。

 お隣さんが面白いブログを綴っていた。

 小学校も入学前、琴を習っていたがその曲は地唄「黒髪」であったという。

意味も知らず(当たり前であるが)

「黒髪のむすぼれたる思ひをば解けて寝た夜の枕こそひとり寝る夜のあだ枕・・」と唄っていたそうな。

 今頃気づいたご本人は、何ということと少しあきれておいでのようだったが、粋なお師匠さんではないか。

 日本語の豊かさには今更ながら驚かされる。あだ枕、ひとつ枕、膝枕、枕を交わす・・一つの寝具にこれだけ男女の情愛が込められ、表現される。

 お隣さん、人の生きる力はエロス、歌も文学も芸術活動はすべてこれが根源です。お師匠さんの教えはあだやおろそかにしてはなりませんぞ。

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