紀元二千六百七十七年
今年も梅干を仕込んだ。
実を採った木はかなりの古木、苔も生えて最近は少し衰え気味ではあるものの、自家用には有り余り、近所や知り合いにも分けている。
重宝しているこの木、ずいぶん昔、由来を父から聞いたことがある。昭和15年、紀元二千六百年を記念して国防婦人会が苗木を配布、それを祖母が植えたものという。
日中戦争真っ最中、太平洋にも暗雲が立ち込めようとする非常時、戦地の兵隊さんに梅干を、という趣旨でもあったのか。
安保法制やら共謀罪やら、世の中は何やら戦前回帰の様相を呈している。
実を付け始めたころからは「戦地」に関わることのなかった齢77年のこの木にあやかり、これからもそうありたいと少し気を取り直す。